「"この手で人生を変えてしまうかもしれない"――その怖さが、覚悟を生んだ」
—— 施術家としての第一歩は、命を預かるような責任から始まった
マッサージという言葉から、リラックスや癒しを想像する人は多いかもしれません。
けれど、“身体に触れる”という行為の背後にあるものは、実はとても深く、大きなものかもしれません。
彼女が施術家として本格的に歩み出したのは、ごく自然な延長線上にありました。
子どもの頃から家族の身体に触れてきた経験。
それが“仕事”に変わったとき、思いがけず彼女の心に芽生えたのは、「怖さ」でした。
「初めてお客様の身体に触れた時、すごく怖かったんです。
ただ筋肉やリンパに触れているだけじゃない、その人の“人生”に触れてしまうような感覚がありました。
もし私の施術が、悪い影響を与えてしまったらどうしよう。
それが本当に怖かったんです」
ただの施術ではない。
その奥にある人生にまで影響を与えるかもしれないという自覚は、彼女に覚悟を迫りました。
そんな中で、彼女は自分自身に問いかけました。
「私はこの道をやりたいのか、やりたくないのか。
身体を触れさせていただきたいのか、治させていただきたいのか――。
その問いに対して、自分の中から出てきた答えは、
“させていただきたい”という気持ちでした」
その瞬間から、彼女の中で何かが明確になりました。
“この仕事を全うする”という決意です。
「それならもう、怖いとか迷いとか言っている場合じゃない。
施術させていただくからには、今の自分にできることを全部出し切って、
精一杯の施術をしようと心を決めたんです。
それが、私にとってすべての始まりでした」
「身体だけを見ていても、本当の満足には届かない」
—— その人の“人生”に寄り添う施術とは
施術家として、ただ身体を整えるだけで終わってしまうことは簡単です。
不調を訴えられた部位に手を添え、痛みを和らげ、その場で「よかったですね」と言って終わる。
けれど、彼女の提供する施術には、それだけでは終わらない“深さ”があります。
「もちろん、マッサージやリンパケアは、医療というよりエステに近い部分もあると思います。
でも私は、“身体の向こうには人生がある”と思っているんです」
彼女は、お客様の「痛み」や「疲れ」をただ処置するのではなく、
その背景にある想いや努力、日々の営みまでも汲み取ろうとします。
「この方は、どうして今、メンテナンスをしたいと思ったのか。
どんなことを普段頑張っていて、どんな未来を目指しているのか。
それをまず、お聞きするようにしています」
たとえば、仕事で集中力を切らさずに働きたい方。
家族のために元気でい続けたい方。
夢に向かって走り続けている方。
そうした一人ひとりの人生の背景に、彼女はしっかりと耳を傾けます。
そして、「その人がまた頑張れるような身体づくり」を提供することに、全力を尽くすのです。
「痛みを取ることがゴールではありません。
“その人らしく生きられる身体”を整えること。
それが、私の施術の原点です」
彼女が施術するのは、身体という表層だけではなく、
その奥にある「人生のリズム」と「心の声」そのものなのかもしれません。
「通っていない27日間こそ、大切にしたい」
—— 日常に根づく“セルフケア”が、満足度を育てる
お客様がサロンに足を運ぶのは、月に2〜3回。
どれだけ丁寧に施術をしても、その時間は人生全体から見れば、ほんのわずかなひとときにすぎません。
だからこそ、彼女は**“残りの27日間”にこそ、施術の本質がある**と考えています。
「メンテナンスって、結局はお客様と一緒にやっていくものなんです。
たとえ月に2回、3回来てくださっても、残りの20日以上は、
ご自身の生活スタイルの中で日常を送られていますよね。
その時間をどう支えるかが、私にとってすごく大事なことなんです」
彼女が意識しているのは、“その場限り”のケアではなく、“その人の暮らしに続いていくケア”。
だからこそ、施術の際には必ずこう伝えるそうです。
「今日はこのあたりが張っていましたね、とか、
こういう時には、こんなふうに触れてみてください――と、
その方の体調に合わせた、ほんの少しのセルフマッサージやケアをお伝えするようにしています」
それは、まるでお守りのようなアドバイス。
毎日の生活の中で、「あ、あのとき教えてもらったやつだ」と思い出してもらえる、
やさしくて、すぐにできる小さなケア。
「それをするだけで、調子を維持しやすくなったり、
次にお会いするまでの身体の状態が安定したりするんです。
ちょっとしたことですが、お客様の満足感にもつながっているのかなと思っています」
施術は、ひとときの癒しでは終わらない。
お客様の“これからの日常”にそっと寄り添う、その想いこそが、
信頼と満足のベースになっているのかもしれません。
「“この手技じゃないと治らない”——そんな言葉が支えになる」
—— 痛みの奥にある“やりたいこと”を叶えるために
彼女のもとを訪れる方の多くは、
肩こり、腰痛、膝の不調、足首の痛みといった、日々の生活に支障をきたす身体の悩みを抱えています。
ただ、彼女の施術に対して寄せられる声は、それだけではありません。
「肩こり一つ取っても、“この手技じゃないと治らない”とおっしゃってくださる方がいらっしゃって。
ご自身の身体の変化を実感してもらえることが、やっぱりすごくうれしいです」
腰痛で、立ち上がるたびに痛みが走っていた方が、施術後にはすっと自然に立ち上がれるようになった。
股関節や膝に問題があり、階段を一段ずつゆっくりしか降りられなかった方が、
「術後にはトントンと軽やかに降りられるようになった」と笑顔を見せてくれた。
それは、ただ“痛みが取れた”ということ以上の意味を持っている。
「生活の動作が変わると、“やりたい”が叶い始める」
—— 回復は、人生を前に進める力
彼女の施術は、生活そのものを変えていく。
「階段がスムーズに降りられるようになると、
“じゃあ外に出てみようかな”って思えるようになる方もいらっしゃいます。
日常の中の動作が変わることで、できることが一つずつ増えていくんです」
ただ症状を和らげるのではなく、
お客様の「こうなりたい」「こう過ごしたい」という未来に向けて、
身体がついていける状態を整える——それが、彼女の施術の本質なのだろう。
「“楽になった”だけじゃなくて、“できるようになった”
そう言っていただけると、本当にこの仕事をしていてよかったなと思います」
そのひとつひとつの“できた”の先に、
お客様それぞれの、豊かで自由な人生が待っている。
「施術をやめるかもしれない——そう思った時間があった」
—— 崩れた信念の先で、もう一度“自分の原点”と向き合った
事業において、成功と失敗は繰り返されるもの。
彼女にとってそれは“当たり前”であり、「うまくいったものを繰り返し、改善を重ねることが事業の本質」と語ります。
しかし、その冷静さとは裏腹に、本当の試練は“心”に訪れた瞬間でした。
「一番つらかったのは、祖父が亡くなった時です。
私がこの施術に出会い、興味を持ったきっかけは、家族の身体をよくしたいという想いからでした。
中でも祖父は、週に2回、何年も私の施術を受けてくれていた存在でした」
その祖父が亡くなった時、彼女の中で“信じていたはずの価値観”が揺らぎました。
「私は本当に、この施術をやりたいのか?
家族をきっかけに選んだ道が、突然“空っぽ”になったように感じてしまって。
しかも私は、もともとは研究者の道を歩んでいたんです。
教授を目指すというキャリアを手放してまで選んだこの仕事なのに、
その選択が間違っていたのかもしれない、とまで思ってしまいました」
戻る道もない。
進みたい気持ちも見えない。
そんな中で、彼女は施術から一歩距離を置くという選択をします。
「お客様には誠実に向き合っていましたが、
それ以外の時間はあえて“施術のことを考えない”と決めました。
無理に走り続けるのではなく、原点に立ち返ろうとしたんです」
何も決めつけず、「やめる選択も自分に許す」。
そうして1ヶ月間、自分の想いを見つめ直した結果、彼女の中に再び浮かび上がったのは、
——「やっぱり、施術をしたい」
という想いでした。
「私自身、人生の転換期の中で深く悩み、見直し、また前を向くという経験をしました。
でもそれは、きっと誰にでもあることなんですよね。
忙しい時期、人生が揺れる時期、体調を崩しやすい時期って、きっと重なってるんだと思います。
だからこそ私は、そうした“人生の節目”に立ち会える施術家でありたい。
お身体を整えることで、その方の人生の転換期を、そっと支えられたら——
そんな想いが、今の私の原動力になっています」
「人生の節目に、そっと寄り添える施術を」
—— その手のひらには、静かな覚悟とあたたかさが宿っている
小さな不調も、長く続く違和感も、
時に私たちの歩みにブレーキをかけてしまうことがあります。
けれど、それを誰かに整えてもらうことは、
「ただ楽になる」ということ以上に、
「もう一度、自分らしく進む力を取り戻す」ことなのかもしれません。
彼女の施術は、まさにその力を思い出させてくれます。
—— 痛みの裏側にある想いに耳を傾け
—— 日常を支えるケアを丁寧に伝え
—— 自分自身の迷いと向き合いながら、
いま目の前の人に誠実に向き合い続ける
そんな姿勢が、施術を通して、確かに伝わってくるのです。
「身体の向こうには、その人の人生がある」
そう信じて、日々丁寧に手を添える彼女の存在は、
きっと多くの人にとって、静かな希望になるでしょう。
健康づくりの専門家 Mai Takaseさん
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